そうか。美術作品に向かうように”人”に向かうべきなんだ。
人と人のつながりを”フレンドシップ”と呼ぶように、人と美術作品が出会うという現象を”アートシップ”と呼ぶなら、この2つの”シップ”で起きていることは、ほぼほぼ同じことなのじゃ。
その昔、ヒトがまだ農耕という手段をもたず、もっぱら狩猟とか採取で食料を得ていたころ、洞窟の奥深いところに牛などの獲物の絵を描いていた。
美術のはじまりとされる発見だけど、昔のヒトがそんな絵を描いた理由は、神様だかなんだかに、明日その獲物が穫れますようにというお祈りの意味だっただろうと言われている。
ここでの”アートシップ”は、だから、作者と神様との間をつなぐものだった。
それからしばらくは、もっぱら自分たちと神様の関係性を保つために美術作品はつくられていたけど、そのうち(どのうちだかよくわからないけど)、相手が神様じゃなく、同じヒトになった。
と考えると、フレンドシップ ≒ アートシップ、という等式が出てくる。
もう誰も覚えてないかもしれないけど、『刑事コロンボ』のある放送回の話の中で、確かコロンボ夫妻が珍しく豪華客船かなんかに乗っていて(カミさんはもちろん出演しない)、その客船の中で殺人事件が起きて、コロンボが解決するんだけど、コロンボはその船長に何度も怒られていた。
「これはボートじゃない。シップです」