たてたてし

佐藤正英さんの『隠遁の思想』のなかに、「たてたてし」ということばの意味を説明してあるところがあって、ちょっとおもしろく感じた。

「たてたてし 意味」というフレーズで、web検索すると、「強情で腹を立てやすい」とか「いじっぱりである」「とげとげしい」「かどかどしい」とかいった説明が並ぶ。
これだとあんまりいい意味ではないように感じる。こころが狭く、偏っていて、そこからひとの言動に文句をつけたり、ことばにはしないまでも、そうした感情を表にあらわしたりする人が思い浮かぶ。

だけど佐藤さんの説明はそうしたものではまったくない。

《「たてたてし」は、一筋に道理をたてて他を顧みようとしないさまをいう。》
(『隠遁の思想』ちくま学芸文庫 p.132)

この意味だと、なにか信念のようなものをもっていて、その信念のようなものを第一に行動する人、みたいな、どちらかと言えば、立派な人を思い浮かべることができる。(もちろんこうした信念の人は、そこから他の人とぶつかるような事態が起こる可能性を十分もっている)

ある言動を、なす方から見るか(これが佐藤さんの説明)、なされる方から見るか(これはweb検索の説明)、という違いだろうか。

特になにも考えておらず、それが周りのひとからもそう見て取れるので、あんまり役に立たないなあ、という意味で、「よこよこし」ということばどうだろう?
(もちろんぼくが日頃カミさんからそう思われていることに由来しています)