彼らはなぜ、そのような絵を描いたのか?

今から3万5千年前、フランスやスペインの洞窟や岩陰などに動物の絵を描いていた人たち(オーリニャック人やマドレーヌ人たち)のことだ。

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『西洋美術の歴史』(History of Art for Young People、ジャンソン父子、2001)
より01
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著者によると、

《(それらの洞窟絵画は)単なる装飾ではなく、もっと真剣な、呪術的な意味合いがそこにあったことは疑いがない》

そうで、そう考えられる理由として、

《それらの絵は洞窟に入ってすぐ見えるような場所にではなく、もっと奥まった、四つん這いにならなければ行けないような場所を選んで描かれていた》
《しばしば、動物たちに向けられた槍や矢を示す線が描かれている》
《古い絵の上に新しい絵を重ねて描かれていた》

ということを挙げている。

こうしたことから、彼ら(洞窟絵画の作者たち)は

《図像と現実とを明確に区別していなかった》
《ある動物を描くことは、その動物を支配下に置いたということを意味していた》
《さらにそうした図像を「殺す」ことで、その動物を殺したと信じていた》

のではないかと著者は想像している。

つまり、彼らにとっては、図像を描くという行為自体が、動物を獲るための呪術的意味合いをもっていたのだ。明日、獲物が穫れますように、という、おまじないとして絵を描いていたのだ。

ぼくたちは「ほしい」ものを絵に描く。
描くことでその「ほしい」ものを手に入れることができると信じて。

それにしてもそんな昔からやっぱりフランスが美術の中心だったのだなあ。