食べるものの調達がうまくいくようになった彼らは、次に「死」のことを考えるようになった。
紀元前8000年ころ、氷河が後退するとともに、「新石器時代」が始まった。
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『西洋美術の歴史』(History of Art for Young People、ジャンソン父子、2001)
より02
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この新しい時代は中東から始まった。
《(その時代の)真に画期的な達成は、動物の飼育と穀物栽培の試みに成功したことだった。それは定住生活を可能にし、そこから共同体ができ始めたのだ。》
《こうした新石器革命を経てはいるが、有史文明の方向へ展開する兆しを示していない社会を呼ぶのには「民族的社会」という言い方がふさわしい。(そうした社会を現代に求めることもできる)》
《民族社会の美術全般に共有される特徴がある。
1 想像力による変形(アニミズムの世界)
自然状態を注意深く観察するのではなく、想像力によって変形する。
その関心は、可視的世界にあるのではなく、目に見えない、不安に満ちた、
精霊の世界にある。
2 祖先礼拝
祖先の霊魂はなだめられなければならない。
ならば、祖先にふさわしい住まいの場所を用意する必要がある。
霊魂を宿らせる。
それが美術の役目となった。
3 美術作品は、造形上、自然な状態から極端に逸脱している
霊的世界は現実から、できるだけ遠い場所にあることを伝えようとしている。
霊界を日常の現実世界から美術家の想像力の許す限り、厳しく分断しようと
努力している。》
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旧知の人物の突然の退場。(それが「死」)
その変化が自身にも及ぶという想像。
すると湧き上がるおそろしさ、不安。
そうした心理的苦境をなんとかコントロールして、安心したい。
そのために霊的世界を作り出し、その安寧を祈願することで安心を得たくなる。 その祈願の対象を作り出すために、美術が必要になる。
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現代ではそうした祈願の対象は、お金で作られると信じているようです。
(生命保険に入る行為などはそうした役割をしているように思います)