実はまだお休みしている。
今月15日をもって、今勤めさせてもらっているところでの雇用形態が違ったものになるので、それまでに有給を使っちゃってとのことなのだ。とは言え、もうそれほど、ほとんどか、有給は残っていない。
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焼酎という飲み物があって、「焼酎はなぜ焼酎なのか?」なんてしょっちゅう思う。
焼酎は「しょうちゅう」と読むのだけど、誰かがどこかで「しょうちゅう」と声に出して言うたなら、その発言者の辺りがたちまち居酒屋の雰囲気を帯びてくるように感じるのはぼくだけではないはずだ。
「しょうちゅう」はかなり「しょうちゅう」なのだ。
ぼくの脳内図書館の奥の方に並んでいる、ちばてつやさんのマンガ『おれは鉄兵』の中のどこかの鉄平のセリフに、「酎を割って飲むバカがいるか」なんていう感じのセリフがあって、あまりに名言だと思うので、手垢のついた額に入れて飾ってある。ちなみにこのとき鉄平は中学生なのだ。
「焼酎」という字面もすごい。「酎」を「焼」くのだもの。
大体がこの「酎」という字は焼酎の酎としてしか読み書きした覚えがない。酎ハイというものもあるが、こちらはカタカナ表記が似合う。
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ワインとか清酒とか、ウイスキーでもジンでもいいけど、これらのお酒はその名前からしてなんかハイカラというか、ツンと鼻先を上げている感じがして、それはそれで大好きだけど、「焼酎」のもつゴツとした頑固な酒飲みな感じがしない。
この「焼酎」のもつ素朴さに対抗できるのは「テキーラ」ぐらいか?
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焼酎飲むなら、アテはやっぱりそれなりのものでないと雰囲気が出ない。焼き肉とか刺し身とかウインナーとかチーズなんてもってのほかだ。
まあかなり譲って、はんぺんぐらいなら許してもいい。おでんもいいが、炙ったスルメとか、コチコチなイワシの焼いたのとか、賞味期限なんてものとは縁を切ったイカの塩辛とか、そういう、見てるだけで涙が出てきそうなものがグッとくる。
焼酎を飲むときに使う器は、ヘコボコになったアルマイト製のものか、だいぶ曇った透明のガラスコップに限る。目の前に持ち上げると、焼酎の向こうがぼんやり煤けて見えるようなやつ。
飲むときの姿勢も重要だ。
畳か板の間に、座布団はあってもいいが、その座布団は端の方が綻んでいる必要がある。そこに胡座で座って、背中をできるだけ丸め、視線は胡座に組んだ足先あたりにふうらりふらりと焦点を合わせないようにしてないといけない。
酎の入ったコップを右手に、その右手の手首あたりを胡座に組んだ膝の上に置き、ゆらゆらとコップを揺らしていなければならない。その揺れに伴って、酎の表面がなだらかに運動するようでなければならない。
口の中にはアテを入れ、それをクチャクチャと噛むでもなく舐めるでもなく、ともかく顎を動かしながらアテを感じるのだ。アテを感じさえすればいい。あるリズムでもって、そこに酎をグイと参加させる。酎だけをサクッと喉に通し、アテまだあらかた口中に残っているようにする。
そしてその都度、頭を少し揺らす。目を少しだけ開いて、己の良い具合を視線の揺れによって判断し、まだまだなようなら、コップに酎を注ぎ足す。
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ああ。
これが憧れの焼酎航路。
《参考from「偽日記@はてなブログ 2024-12-31」》